ゲーム音楽を分析するための「IEZAフレームワーク」というのがあるらしい
以前、別のブログに載せたやつの加筆修正記事。
ゲーム音楽研究について調べてたら出くわした、「IEZAフレームワーク」について。ただし、情報源は主にWikipedia……。
1.IEZAとはなにか
(en版Wikipediaより引用)
要するに、ゲーム内のサウンド(効果音やBGM)を4つにわけて分類しようぜ、という提案である。その4つとは、
I:Interface (インターフェース)
E:Effect (エフェクト)
Z:Zone (ゾーン)
A:Affect (アフェクト)
のこと。それぞれの頭文字をとって"IEZA"となるわけだ(発音は「イエザ」でいいのかな?)。
このような概念を導入することによって、ゲーム音楽の分析をよりスムーズにやろう、という目論見である。
このマトリクスを構成するタテヨコ2つの軸は、それぞれ
diegetic⇔non-diegetic
activity⇔setting
の対立軸として立てられている。
では、これら両軸は、一体どういう意味をあらわすのだろうか。
まずdigetic(ダイジェティック)。直訳すれば「物語世界の中にある」というような意味で、もとは映画理論なんかの用語らしい(さらに遡ればギリシャ悲劇やなんかを扱った文学論にまでたどり着くっぽいが)。まあ要は、映画やらゲームの登場人物の視点に立つということだ。
non-diegeticはその反対で、「物語世界の外」ということ。ゲームを遊ぶわれわれリアル人間の立場のことだ。
だからこの対立は、「オブジェクトレベル⇔メタレベル」「人間⇔神」「キャラクター⇔プレイヤー」等々、様々にいわれてきた次元区分に対応していると考えてよいと思う。
次にactivity(アクティヴィティ)。これは、プレイヤーなりキャラクターなりの「動きに連動した音」といった具合で、動作に伴って発生する自然音や、カーソルを動かすときの音などを指し示す。
その対極のsetting(セッティング)は、動きに連動しない音、つまりゲームの設定・環境や世界観・物語の文脈といった静的な状況をセットする音というくらいの意味になるだろう。
2.それぞれの区分について
次に、2つの軸によって生成された4つの領域それぞれについて説明する。
①Effectとは
diegeticかつactivityなサウンドが、Effectである。
つまり、「ゲームの世界の中」で鳴っており、かつ「キャラクターの動きに連動している音」ということで、足音、剣で切る音、ボールを打つ音などのことだ。いわゆる「SE」とほぼ同義だと思われる。
②Zoneとは
diegeticながら、Effectとはちがいsetting側に属する。
キャラクターの動きに応じて発生する単発的な音ではなく、その環境=物語世界の中で持続的に鳴っている音、要するに環境音のことだ(街の喧騒、スタジアムの歓声など)。
Zoneによってプレイヤーは、その場がどのような場なのかを理解することが容易になる(settingされる)ということだろう。
③Interfaceとは
Effectとおなじくactivityに属するが、non-diegeticなのがInterfaceである。
Effectはキャラクターの動きに連動していたが、Interfaceはプレイヤーの動きに連動する。
カーソルの移動音や、画面の切り替え音、ゲージが減る時の音などがこれである。
ゲームの世界の中では鳴っていない、プレイヤーのみに聴こえるサウンドということだ。
④Affectとは
最後に残った、settingかつnon-diegeticなのがAffectである。
Zoneのようにその場を説明する持続的な背景音であるが、Interfaceのようにプレイヤーにしか聴こえない音であり、いわゆる「BGM」はほとんどここに分類されるだろう。これも、キャラクターには聴こえていないということになる。
ふつう「ゲーム音楽」と呼び、サントラなどにも収録される楽曲というのはほぼAffectということになる。
3.まとめ
というわけで、「IEZAフレームワーク」について軽く調べてみた。
主にゲーム制作者目線での話ではあるわけで、いちゲーム音楽リスナーからするとあまり面白みのない話かもしれないが、まあこういう理論的な分析も進みつつある、という状況を理解しておいて損はないのではないか。
おわり。
(参考リンク)
日本のゲーム音楽論が出遅れている件について - ゲーム音楽史研究所
Gamasutra - IEZA: A Framework For Game Audio